40mm化をどう考えるか

 2000年最後の全日本卓球選手権は新しい40mmボールで行なわれました。2mm大きくなり、0.2g重くなったボールはテレビでみても明らかに違うものでした。プロのレベル、あるいは一般的な議論として、40mmボールにどのような特性があって、プレイヤーはどのように対応すべきかといったことがすでに遡上にあがってきています。それらの議論については、卓球レポート2001年1月号に巻頭特集が組まれており、そちらを参照していただいたほうがよいでしょう。

 ここでは、理屈、あるいはプロはどうなのか、といった議論はできるだけ省きます。関西学連の4部と3部を行ったり来たりしているわれわれ。卓球ピラミッドの底辺に近いわれわれのレベルで、40mmを考えたいと思います。

 まず、私が40mmを打ってみた、その感触から述べさせていただきます。

1)正確にミートしないと飛ばない。

2)回転がかからない。かかっても相手に届く前に回転量が減ってしまう。

3)コントロールがつけやすい。かなり正確な位置までボールを運ぶことができる。とくに台上プレーはやりやすい。左右だけでなく前後もコントロールが効くため、ストップも相当強烈なものが可能。

4)不確定要素が減る。

5)戦略的要素の比重が高まる。

上記の中で、1)〜3)については、あちこちで語られていることでもあり、またボールが大きくなれば当然現われてくる問題であろうから説明を省きます。4)、5)については、あまり言われていないことなので、少し理屈っぽく解説しておきます。

卓球に限らず、球体を使った遊びというのは、その玉が大きくなればなるほど、不確定要素は減ります。逆に小さくなればなるほど、人間では制御しきれない、運の要素が強くなります。身近な例では、ビリヤードにスヌーカーという、主に東南アジアで盛んに行なわれている競技があるのですが、その玉は普通にナインボールなどで使うものに比べて小さいのです。これによって、実は難易度がぐんと高くなっているのです。少し想像すればわかると思いますが、ビリヤード台の大きさをそのままに、ポケットと玉の大きさを1.5倍にすれば、まずはずしません。

卓球も同じように、2mm大きくなったことによって、こちらが行なった動作を素直にボールが反映する、ということがおきると思います(という実感もあります)。

 このことが5)にもかかわってきます。これまである程度運任せだった部分が、思ったとおりに行くようになる。コースも「だいたいフォア側」といった具合ではなく、フォア側を1/3に割って、それぞれに打ち分けられるくらいのコントロールがつくようになると、それをいかに試合で組み立てていくか、といったことが現実味を帯びてきます。これは、はっきりいって、レベルの高い選手は38mmのときから行なっていたことです。しかしながら、われわれの技術レベルでは、練習のときはともかく、38mmボールの試合で5往復以上、まともな打ち合いが続く場面と言うのは1セットであっても5本くらいだった。その状況では、そうした組み立ての巧拙というのはあまり表面化してきません。
 40mmボールになると、われわれでも、相当長くラリーが続くことが予想されます(これは、卓球レポートを参照してください。理由はさきほどの不確定要素の減少とスピード、回転数の減少です)。そうなってくると、組み立ての巧拙の差は、はっきりと試合の結果に現われてくるはずです。一言で言うなら「40mmではクレバーな選手が勝つ」となります。

 もう少し、具体的に説明しておきましょう。40mmでは次のような戦略(点の取り方)が冷や飯を食います。

     サービスエース狙い・・・回転量が減るのでそう簡単にサービスエースは取れない

     三球目攻撃命(笑)・・・三球目攻撃だけでは抜けないケースが多くなってきます。

     パワードライブ・スマッシュ・・・卓球レポートなどでは「スマッシュが有効」という記事が出ており、それはおおむね間違っていません。しかしながら、それは組み立てのなかでスマッシュが有効という次元において、です。相手の体勢がくずれていないのにスマッシュを打つのは、ドライブと同様、40mmでは有効ではありません。

では、どういった技術習得を目指して練習するべきでしょうか。私はとりあえず以下のようなものを考えています。また思いついたら書き加えておきます。

     サーブ練習 
 
サービスは相当程度のコントロールが効くようになる気がします。私の実感では、切れたサービスを落とすポイントを5cm単位で、しかもバウンド後の動きもある程度コントロールする、くらいのことは可能になるように思います。これは今までのサービス練習とは意識を変えた練習が必要だと思います。一方で、回転量そのものよりも、いかに回転をわからなくするかということも重要になって来るでしょう。

     基礎体力
 
われわれのレベルでも、相当にラリーが長くなってきます。また、0.2g重くなったボールを打つ負担は想像以上です。ドライブマンは特に、ですが、他の戦型も体力トレーニングが必要です。具体的にはランニングで心肺機能を高めることからはじめるのがよいと思います。

フォーム
  より基本に忠実なフォームが求められます。ひとつには、ラリーが長くなるため、無駄の多いフォームでは極端に体力を消耗してしまうと言うこと。もうひとつには、0.2g重いために、特にフォアのフォームが悪いと腱鞘炎の原因になると思います。とくにドライブマンの方は気をつけてください。

     スマッシュ
 
ドライブマンもスマッシュが打てるようになることが必要と一般的に言われています。私はこれについてそう異議はありませんが、われわれのレベル、ということを考えるとどうかな、と思います。ドライブを気持ちよく打てている人が、40mmになって、「やっぱりスマッシュを打てなくちゃ」といった気持ちでスマッシュを練習するのは感心できません。

ドライブ
 
ドライブの威力で抜く、という発想は捨てましょう。ラバーと接着剤によって不可能な話ではないと思いますが、少なくとも私は40mmボールで、ドライブマンにはそう簡単に強引な形で抜かれない、と思いました。そうなってくると、ドライブを打っているほうの体力の消耗は著しいですから、うまくありません。コースを打ち分ける練習とともに、速い打点のドライブが必要となってくるでしょう。

レシーブ
 
40mmになると台上プレーが楽になると言われています。私の実感でもそうでした。注意しなければいけないのは、これは「台上プレーを練習しなくていい」のではなく、その逆だということです。台上の払いやストップなどは表ソフトの特権のように言われてましたが、40mmボールなら、はっきり言って誰でもできます。だから、逆に誰もが練習しなければならない必修課題になったといえるでしょう。複雑なことは必要ありませんが、ストップとフリックは必修だと思います。

道具について

 道具についてうとい私は偉そうなことはいえません。ともかく2000年12月現在、私はスペクトル厚から特厚に変え、接着剤は揮発性をいくつかためしてみました。一流選手の対応をみていると、「38mmと同じような打球感」を求めたものとみえます。それもひとつの方法ですが、もしかすると40mm独特のラケット・ラバーの組み合わせと言うのがあるのじゃないかな、とも思います。ともかく、研究は必要でしょう。ブライス特厚と揮発性接着剤の組み合わせだと、さすがにすごいドライブ打てるようだとも聞いています。でも、高いからねえ(笑)。

lastupdate:2001-01-16 0:31